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《Column vol.17》脆弱性骨折を救う!骨折リエゾンサービス(FLS)

《Column vol.17》脆弱性骨折を救う!骨折リエゾンサービス(FLS)

転倒による骨折が患者さんやご家族のその後の生活を大きく変えてしまうことは、これまでの記事でも述べさせていただきました。

高齢になると骨密度が低下し、軽微な外力(立った姿勢からの転倒やそれ以下の外力)で容易に骨折してしまいます。この骨折を“脆弱性骨折”と呼びます。この脆弱性骨折は2回目の骨折率や死亡率を大きく上昇させるデータが出ているので、放っておくのは大変危険です。

そこで国が推進しているのが“骨折リエゾンサービス(FLS)”です。あまり耳馴染みのない単語だと思うので、今回の記事では脆弱性骨折患者の生活を救うFLSについて、有用性や内容について解説していきます。

脆弱性骨折について

脆弱性骨折とは、先述した通り軽微な外力(立った姿勢からの転倒やそれ以下の外力)によって生じた骨折を言います。

数字で見る脆弱性骨折の危険性

脆弱性骨折、特に大腿骨近位部骨折(股関節の骨折)と椎体骨折(背骨の骨折)の場合は、その歴だけで骨粗鬆症と判断され、治療対象となります。
その理由は、脆弱性の大腿骨・椎体骨折患者は二次骨折リスクと死亡リスクが非常に高いからです。

例えば、脆弱性の大腿骨近位部骨折患者では、健常者と比較して、大腿骨骨折のリスク(2回目の骨折)が16.9倍になります。

また、脆弱性の大腿骨近位部骨折、椎体骨折患者は、1年後の死亡率が約20%と約30%、5年後の死亡率は約60%と約70%に昇ります。

にもかかわらず、脆弱性骨折患者後1年間に行われている骨粗鬆症の薬物治療率は約20%に過ぎません。

そこで、脆弱性骨折患者の生活を守るために適切な治療を広める必要があります。その1つの手段が骨折リエゾンサービス(Fracture Liaison Service : FLS)です。

FLSって何をするの?

ここでは、簡単にFLSについて解説します。詳細は“日本骨粗鬆症学会 骨折リエゾンサービスクリニカルスタンダード”をご覧ください。(http://www.josteo.com/ja/news/doc/200518_3.pdf)

FLSで重要なことは、①適切な評価と治療を提供することと、②多職種連携です。

①    適切な評価と治療

適切な評価とは、骨密度(DXA法、レントゲン画像評価、FRAX®︎など)と続発性骨粗鬆症に対する血液検査が必須項目となっており、他に転倒リスク評価や認知機能評価(MMSE)、サルコペニアの評価も推奨されています。

*続発性骨粗鬆症は、1型糖尿病、早期の閉経、性機能低下症、栄養失調、慢性肝疾患、成人の骨形成不全を指します。

また、適切な治療は、治療対象者のスクリーニングと対象者への適切な薬物療法、理学療法士等による転倒予防対策(筋力増強運動、歩行練習、住環境整備)が挙げられます。

②    多職種連携

リエゾン(Liaison)とは、「連絡口」という意味です。つまりFLSは職種間の連携・連絡がキーとなります。例えば、続発性骨粗鬆症となる1型糖尿病患者の脆弱性骨折の場合、整形外科医と糖尿病専門医の連携が必要となり、薬物やリハビリテーションの状況は医師、薬剤師、リハビリテーション専門職の情報共有が必要となります。

この他にも、FLSは患者や職員に継続した教育を行う必要もあります。FLSを導入したことで、退院後の脆弱性骨折の治療率は90%へ増加、3年間の治療継続率も70%まで増加したことが報告されています。

診療報酬への反映

二次性骨折予防継続管理料

FLSが脆弱性骨折後の治療率の向上に有効と国に判断されたことで、2022年の診療報酬改定にて“二次性骨折予防継続管理料”が新設されました。

二次性骨折予防継続管理料には1、2、3があり、それぞれ手術を担う急性期病院、リハビリを担う回復期リハビリテーション病院や地域包括ケア病棟、退院後の外来通院(1年間)の時期に1人の患者から算定できます。

下図が二次性骨折予防継続管理料の概要です。

出典元:一般社団法人骨粗鬆症学会(http://www.josteo.com/ja/liaison/effort.html)

“適切な評価及び治療”とは、前述のFLSクリニカルスタンダードの「適切な評価と治療」を指します。

緊急整復固定加算と緊急挿入加算

二次性骨折予防継続管理料1を算定している病院では、75歳以上の大腿骨転子部骨折患者に“緊急整復固定加算”を、大腿骨頸部骨折患者には“緊急挿入加算”を算定できることになりました。算定の要件には、骨折後から48時間以内に手術をすること、5年以上の経験を有する整形外科医が2名以上配置されていること、内科医・麻酔科医の配置、ガイドラインやマニュアルの作成などがあります。

ご自身の地域でFLSを実践している病院を知りたい場合は、病院のHPに取得している施設基準が書かれていので、そちらに二次性骨折予防管理料が書かれているかどうかを調べてみてください。

まとめ

  • 骨粗鬆症は脆弱性骨折を引き起こす。
  • 脆弱性骨折は、二次骨折や死亡のリスクを高める。一方で、脆弱性骨折後の骨粗鬆症患者の薬物治療率は20%程度に過ぎない。
  • FLSは脆弱性骨折の治療率、治療継続率の向上に効果がある。
  • 医療機関がFLSに取り組むことで、二次性骨折予防管理継続料や緊急整復固定化算・緊急挿入加算を算定することができる。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を監修しました

岡川 修士

岡川 修士 / 理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級・地域ケア会議推進リーダー・介護予防推進リーダー

2010年に理学療法士として入職した病院では、急性期〜回復期のリハビリテーションに加え、住民対象の介護予防事業に携わっていた。現在は、訪問看護ステーションかすたねっとにて、訪問リハビリに従事する傍ら(株)Magic Shieldsのコラムを担当している。

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