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【ウェビナーまとめ記事】 改めて学ぼう!認知症の基礎と最新知見《Column vol.85》

【ウェビナーまとめ記事】 改めて学ぼう!認知症の基礎と最新知見《Column vol.85》

「対策をしているはずなのに、認知症の方が転倒してしまう」「認知症の方の対応(制度やサービス利用も含め)が難しい」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

上記の悩みの解決のためには、認知症の方への誤解を解き、正しい知識をアップデートしていくことが大切です。

今回は、地方自治体や医師会、各種団体の依頼で認知症に関する講演会やワークショップを数多く開催されている石原哲郎先生をお招きし、認知症の基礎と最新知見についてお話しいただきました。

この記事では、ウェビナーの内容を簡単に解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。

認知症と現状

現状700万世帯の65歳以上の単身世帯数の中で、「在宅生活への希望3人中2人は生活に支援が必要でも自宅で暮らしたいと思っている人」の割合は3人中2人であるといわれています。

多くの高齢者が済や慣れた自宅での生活継続を希望しているのです。

この結果からも、単身高齢者の在宅生活支援は重要になるということがわかります。

みなさんは、認知症と聞いて何を想像しますか?

「何もわからなくなるのでは」「家で暮らせなくなるのでは」といったことがイメージされるのではないでしょうか。

このイメージは、認知症という漠然とした恐れからくるものだとも考えられます。

現在、認知症の方の6割は自宅で暮らしています。

さらに、日本社会は共に生きる方向へ進むべく、2024年1月より認知症基本法を設立します。

認知症基本法の基本理念は以下のとおりです。

  • ・尊厳の保持
  • ・意思決定支援
  • ・社会参加の機会確保
  • ・共生社会の実現

つまり、日本社会全体が尊厳の保持など、基本法に則った形で認知症の方と関わっていく必要があると法的に定義されるようになったということです。

正しい知識と適切な支援、周囲とのつながりがあれば、認知症と折り合いをつけて生活を続けていくヒントが得られます。

ここからは認知症へのよくある誤解を解き、そこから正しい知識の解説をしていきます。

誤解①:「認知症は治らない」という思い込み

多くの人が認知症は治らないと思い込んでいます。

例えば、「認知症と診断されたら、もう意味がない」「病院に行っても意味がない」といったイメージです。

しかし、この思い込みこそが適切な診断や支援の機会を逃す原因になることもあります。

見逃されやすい①治療可能な原因

認知機能は低下する原因はさまざまです。

しかし、なかには適切な治療で改善するケースもあります。

例えば、以下のようなケースは改善の可能性がある原因になります。

  • ・甲状腺機能低下症
  • ・慢性硬膜下血腫
  • ・正常圧水頭症
  • ・ビタミン欠乏症、うつ病

認知機能が低下したら改善しないという思い込みを持っていると、こうした治療可能なケースであっても、適切な治療による改善の機会を失ってしまいます。

思い込みで諦めず、正確な診断を受けることが大切です。

見逃されやすい②薬の影響

薬が認知機能に影響することもあります。

例えば、服用している薬の副作用が物忘れや混乱の原因になっているなどです。

注意が必要な薬の例としては、次のとおりです。

  • ・睡眠薬、抗不安薬
  • ・抗ヒスタミン薬
  • ・抗コリン作用のある薬

上記のように、処方されている薬が認知機能に影響している場合、本当に必要な薬だけに減らしていくという視点も状況により大切になります。

薬を整理して改善すると、ぼーっとしなくなったり、ふらつきがよくなったりします。

認知症は人それぞれです。

進行は一人ひとり違いますし、病気の種類で症状が異なります。

また、生活の困りごとも変わってきます。

だからこそ、一人ひとりに合わせた診断とサポートが大切なのです。

認知症の種類と治療方法

次に認知症の種類やその治療方法について紹介していきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多い病気です。

具体的な特徴や治療方法は次のとおりです。

【特徴】

脳にアミロイドB・タウがたまることが原因で起こる症状です。

また、アルツハイマー型認知症は遺伝性と思っている人もいるようですが、実はアルツハイマー型認知症が遺伝するのは5%未満です。

主な症状は次のとおりです。

  • ・最近の記憶を忘れる
  • ・道に迷う
  • ・計算が困難

昔の記憶よりも最近の記憶を忘れるというのが、アルツハイマー型認知症の特徴となります。

【治療方法】

新しい認知症治療薬としてレカネマブ・ドナネマブという薬があります。

脳にたまったアミロイドを除去する薬で、適用対象は、アミロイドPET陽性のごく初期のアルツハイマー病の方のみです。

現在2種類の薬があり、いずれも点滴治療に通院が必要になります。

認知症の進行を少し遅らせる効果があり、副作用としては脳出血などがあげられます。

薬の使用については、メリットデメリットを踏まえたうえで医師と相談しましょう。

レビー小体型認知症の特徴

レビー小体型認知症の症状は、アルツハイマー型とは違う症状があります。

具体的な特徴や治療方法は次のとおりです。

【特徴】

レビー小体型認知症の症状は大きくわけて3つです。

  • 感覚の変化
  • 症状の波
  • 動きの変化

違うものでも人や動物にみえてしまったり、においがわからなくなったりする感覚の変化があります。

また、良いときと悪いときに大きな差がでる症状の波や、歩幅が小さくなるといった動きの変化も特徴の一つです。

一般的な薬を服用し続けることにより、症状が悪化することもありますので、専門医による慎重な治療が必要となります。

【治療方法】

治療法の一つとして、ドネペジルという薬があります。

服薬整理をしたあとに、ドネペジルを服用します。

過去事例では、治療後に幻視が改善し、家族の負担が軽減されるケースがありました。

また、認知症は経過の途中で診断が変わることもありますので、疑問に思ったらかかりつけ医に相談したいと伝えましょう。

脳血管性認知症の特徴

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で起こる認知症です。

【特徴】

症状は脳の損傷部位によって決まります。

主な症状は次のとおりです。

  • ・ぼーっとすることが増加
  • ・食事の左側を残す
  • ・左足を引きずって歩く

他の認知症と合併することが多いのも特徴です。

【治療方法】

適切な薬の管理で改善されることがあります。

訪問薬剤師による指導や薬カレンダーの導入をして、服薬管理を徹底していくことが大切です。

また、適切な薬の管理の他、生活習慣病の管理も重要になります。

高血圧・糖尿病の治療で予防や改善が期待できます。

誤解②「問題行動(BPSD)が怖い?」

BPSDとはいわゆる徘徊や興奮、暴言や介護拒否、妄想などの行動・心理症状のことです。

じつはBPSDという言葉自体が本人を「問題」としてしまう元凶になっているのです。

しかし、認知症観は時代の変化に伴い変わってきているのも事実です。

認知症観とパラダイムシフトを次の表にまとめました。

認知症観古い新しい
基本的考え方・何もわからなくなる病気・本人は病識がない・介護される対象・認知機能は低下しても感情は豊か・本人の思い・意思がある・共に生きるパートナー
対応方針・保護・管理中心・施設収容型ケア・家族が決定・自立支援・意思決定支援・地域包括ケア・本人の意思を最大限尊重
社会の見方・恥ずかしい・隠すべき・社会からの隔離・偏見・差別・誰もがなりうる身近なもの・共生社会の実現・理解と支援

これまでの価値観とは異なり、ニューカルチャーとして、自立支援や共存などが謳われるようになりました。

新しい文化や認知症観で認知症の方と接することにより価値や尊厳が維持・向上し、その結果、治療的作用や改善につながるというよい循環がうまれるのです。

本人の思いに寄り添うケア

現状のケアは、「きっとこう思っているだろう」という周囲の推測に基づくケアとなっておりました。

しかし、今後は「私はこう思っている」という本人の声が主役のパーソン・センタード・ケアを目指していきたいところです。

本人の声が表出したタイミングで、心理的ニーズを拾いあげられることが理想的です。

心理的に求めているものを見つけるための対話

認知症の方の心理ニーズは、以下5つに大きくわかれます。

  • ともにあること
  • くつろぎ・やすらぎ
  • 自分が自分であること
  • たずさわること
  • 結びつき・愛着・こだわり

引用:トム・キッドウッド(5つの心理ニーズ)

上記の5つを意識して、話を聞いていくと心理的ニーズをみつける糸口になります。

事例:「地域住民とのつながり」の維持

心理的ニーズの理解により、適切な支援につながった事例を紹介していきます。

Aさんはある地域から20キロほど離れた場所まで散歩してしまい、帰れなくなったことがありました。

警察にも何度もお世話になった経緯から、周囲の人が心配して対策はないかと考えるようになりました。

そこで、地域包括センターより質問項目をピックアップしたうえで、心理的ニーズを理解するための質問をAさんにしてみたのです。

Aさんとの会話内容から、次のことがわかりました。

会話からの情報情報からわかる心理的ニーズ
困っていたら皆で助け合うようにしている地域の人と情報交換をしているともにあること
話しかけられると嬉しい気持ち包容力をもって周囲に接する人と合う声をかけることを大切にしているたずさわること
ウォーキングをするとすっきりする家が落ち着く。妻の存在はありがたいくつろぎ、やすらぎ
読書や歴史が好きゴミ拾いや挨拶をしている自分が自分であること
ウォーキング途中の喫茶店でマスターと会話を楽しんでいたトレーニングではカラオケや麻雀を楽しんでいる結びつき、愛着、こだわり

この会話からわかったことは、地域とのつながりを大切にしている方であるということでした。

個別ケア会議で共有したところ、ご本人への理解が深まり、地域で助け合って生活していこうという機運が高まりました。

認知症の方であっても困りごとばかりに焦点をあてず、ご本人の心理的ニーズの理解につながるような対話をしていくことが大切です。

そして、今後変わるべきは私たちの視点と関わり方です。

問題行動と決めつけず、その行動の背景に目を向ける、そして背景からさらに心理的ニーズを理解するといった関わりが理想的といえます。

自宅で豊かに生き続けるためのポイント

ここからは、自宅で豊かに生き続けるためのポイントを紹介していきます。

適切な医療やケアと伴奏

安定した自宅生活を続けていくために、早期の適切な診断と診断後支援が重要になります。

生活全体を支えるチーム連携がカギとなります。

特に、サポート役となるのが以下です。

  • ・地域包括センター
  • ・かかりつけ医
  • ・訪問看護師
  • ・ケアマネジャー
  • ・その他専門職

在宅介護は、本人や家族が孤独を抱えやすくもなります。

安定的な生活を継続させていくためには、とにかく一人で抱え込まないというのが大切です。

安心できる環境とリスク管理

自宅生活の大きなリスクは転倒です。

転倒をすると、骨折により入院となった結果、最後寝たきりになってしまうことがあります。

転倒の悪循環は、在宅生活の最大の障壁です。

その悪循環を断ち切るためには、次の対策が大切です。

  • ・早期発見:体調変化に気づく
  • ・薬の見直し:不要な薬を減らす
  • ・環境整備:手すり・証明・段差解消
  • ・適度な運動:筋力・バランス維持

どれか1つではなく、すべてを組み合わせることが大切です。

安全な生活・移動は、安定した在宅生活の継続につながります。

環境整備:「転倒させない」から「転倒しても大丈夫」へ

在宅生活を継続させるための転倒予防は大切ですが、いくら防止しても防げないケースは多いです。

また、転倒を予防しようとすると視点が拘束や閉じ込めになり、結果、行動抑制という認知症の方の尊厳を奪う行為となってしまいます。

認知症の方の尊重し、なおかつ骨折予防ができることが理想的であり、技術と工夫で生活しやすい環境を整えるということが大切です。

環境整備のための商品例としては、「ころやわ」という転倒予防床があります。

「ころやわ」は、転倒骨折リスク低減のためにつくられ、広島県内11病院230床での実証研究にて、骨折率が低下したという臨床エビデンスもある信頼できる商品です。

普段は硬く歩きやすいのに、転倒時だけ柔らかくなる床として、現在さまざまな病院や施設でも導入されています。

孤立させないつながりと支援

在宅介護により孤立させないつながりの場があることも大切です。

診断後に利用できるサポート先がいくつかあります。

  • ・地域包括支援センター・ケアマネジャー(相談窓口)
  • ・介護保険サービス(訪問介護、DS、訪問看護など)
  • ・認知症カフェ(交流の場)
  • ・認知症サポーター・パートナー(地域の理解者)
  • ・家族会・ピアサポート(同じ悩みを持つ仲間)
  • ・各種制度(成年後見制度、医療費助成など)

1人で抱え込まず、本人や家族と伴奏できるような人とつながることが大切です。

実際に多くの人が日々を支えるといった、つながりに恵まれた家族・人も存在します。

心理的なニーズを事前に聞いておくことで、その人が自宅で生活をし続けたいという思いが明確になり、より周囲に協力してもらえる環境が整います。

また、必要に応じAIロボットを活用することもおすすめです。

最近では見守りと対話を一体化したぬいぐるみ型AIロボットも商品化されています。

このように認知症高齢者の日々の「小さなやりたい」に会話で寄り添うというのも一つの方法です。

本来の助け合いの力を取り戻す

他者の苦悩や苦難に突き動かされる人間的な応答、柔らかな反応のことをコンパッション

と呼びます。

コンパッションは、本来みんなば持つはず能力です。

しかし、現社会において、そのコンパッションがうまく発揮されていないのではないかと思う場面もいくつあります。

その一例が、認知症の方への理解不足による不適切な対応です。

今後はそこから抜け出し、みんなが持っているはずのコンパッションを発揮できる環境を整えていくことはとても大切なことです。

引用:「誰もが持つケアの力を発揮 コンパッション・コミュニティ」「ふるえ」Vol.60

まとめ

今日からできることは、認知症について偏見を捨て正しい知識を持つということです。

普通に接したり、温かなまなざしとさりげない手助けは、認知症の方や家族の適切な支援の一歩となります。

また、気になったら相談できる環境を整えることで、認知症の方や家族が一人で抱え込まずに済む社会につながります。

認知症は誰でもなる可能性がある症状であり、決して他人事ではありません。

今後の私達の認知症の方への温かなまなざしが、未来の生きやすい社会をつくっていくのです。

この記事を監修しました

中村 亜美

中村 亜美 / 介護福祉士・フリーライター

専門学校の卒業と同時に介護福祉士を取得し、そこから計12年程、特別養護老人ホームで介護スタッフとして勤務。現在は、フリーライターとして、在宅介護者や介護スタッフ、事業者向けのコラムなどを執筆している。(株)Magic Shieldsのコラムでは、介護施設内の課題解決などに着目し、経験を踏まえながらわかりやすい記事の作成を目指している。

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