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グリーフケアを知る《Column vol.78》

グリーフケアを知る《Column vol.78》

グリーフケア、という言葉を聞いたことがあるでしょうか?医療介護分野では、遺族ケアを連想するかもしれません。一般的には、家族などの大切な人を亡くした方々の悲嘆(グリーフ)をケアすることを指します。

私は訪問看護に従事しているため、お看取りまで関わらせていただいた利用者様のご逝去後にご家族を訪ね、お話をうかがうことがありますが、明るく過ごされている方もいらっしゃれば、ご逝去からある程度の月日が流れても、涙を流して最期の時の後悔の念をお話しされる方もいらっしゃいます。グリーフは時間が解決するものではなさそうです。

今回の記事では、なぜグリーフケアが必要なのかを考えていきたいと思います。超高齢社会、多死社会を迎える日本において、グリーフケアについて考えるきっかけとなれば幸いです。

グリーフケアとは?

グリーフケアとは、大切な人を亡くしたことによって生じる深い悲しみ(グリーフ、悲嘆という)を抱えている人々に対し、その悲嘆からの回復を支援するケアのことです。

「グリーフ」は単なる悲しみではなく、大切な人との死別によって心身に現れる様々な反応(感情、身体症状、行動、思考、人間関係の変化など)を包括的に指します。グリーフケアは、これらの多様な反応を理解し、その人が自分らしい方法で悲しみを乗り越え、立ち直れるようにサポートするものです。

ここでの“大切な人”は家族とは限りません。友人やペットも含まれますが、やはり先行研究によると最も悲嘆からの回復が難しいのは“配偶者との死別“であると言われています。

グリーフ(悲嘆)の主な反応

グリーフの反応は人それぞれ異なり、決まった形はありませんが、一般的に以下のような反応が見られることがあります。

  • 感情の反応: 悲しみ、怒り、罪悪感、不安、孤独感、無感覚、喪失感、無力感など
  • 身体の反応: 疲労感、不眠、食欲不振、頭痛、胃の痛み、動悸、息苦しさなど
  • 行動の反応: 泣き叫ぶ、引きこもる、落ち着きがなくなる、衝動的な行動、故人のものを集めるなど
  • 思考の反応: 故人のことを考え続ける、故人を探す、現実感の欠如、集中力の低下など
  • 人間関係の変化: 他者との交流を避ける、特定の関係者に依存する、周囲への不信感など

グリーフケアの目的

グリーフケアの主な目的は以下の通りです。

  • 悲嘆プロセスの正常化: 悲嘆の反応は異常なものではなく、自然な感情であることを理解してもらう。
  • 感情の表出の促進: 悲しみや苦痛の感情を安全に表現できる場を提供する。
  • 孤立感の軽減: 一人ではないことを伝え、共感と理解の場を提供する。
  • 心身の健康維持: 悲嘆が原因で生じる身体的・精神的な不調を予防・緩和する。
  • 生活の再構築支援: 故人のいない新しい生活に適応し、意味を見出せるようサポートする。
  • 故人との新しい関係性の構築: 物理的に故人がいなくても、心の中で故人とのつながりを持ち続けることができるように支援する。

また、グリーフケアがなされた方からは前向きな発言や自己の成長感が感じ取れる態度や発言が聞かれるようになり、大切な人との別れを心理的に受け入れている状態になります。

グリーフケアの種類と方法

グリーフケアには様々な形があります。

  • 個別カウンセリング: 専門家(カウンセラー、心理士など)が、個人に寄り添い、悲嘆の感情を聴き、サポートします。
  • グループケア(自助グループ): 同じような死別体験を持つ人々が集まり、それぞれの経験を共有し、支え合う場です。互いの共感を得やすく、孤立感の解消に繋がります。最近では「グリーフカフェ」という試みをしている病院もあります。
  • 家族カウンセリング: 家族全体が抱える悲しみに焦点を当て、家族間のコミュニケーションを促進し、支え合いの関係を築くことを目指します。
  • サポートプログラム: 医療機関やNPO法人などが提供する、悲嘆に関する知識提供やセルフケアの方法を学ぶプログラムです。
  • 医療的介入: 悲嘆が非常に強く、心身の不調が深刻な場合(例: うつ病、不眠症など)には、精神科医や心療内科医による薬物療法や専門的な治療が検討されることもあります。

最初に述べたように、グリーフケアは「時間が解決してくれる」というわけではありません。個別カウンセリングやグループケアを提案しても、それに応じない方もいらっしゃいます。

また、ほかの家族や友人から「いつまでもクヨクヨしても仕方がない」「あなたより辛い人はいる」など、発言者は励ましているつもりが言われた方は逆に傷ついてしまうということもあります。そのような状態にある方には、ケアの情報提供はしつつも待つ姿勢が必要と考えています。

まとめ

  • 配偶者との死別によるグリーフ(悲嘆)は回復しづらい
  • グリーフの反応は身体的、精神的、行動的にさまざまな反応を示す
  • グリーフは異常な反応ではない。正常な反応だと伝えてあげることが必要
  • グリーフケアの種類や方法は様々であるが、無理矢理に押し付けるものではない(待つ姿勢も必要)

この記事を監修しました

岡川 修士

岡川 修士 / 理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級・地域ケア会議推進リーダー・介護予防推進リーダー

2010年に理学療法士として入職した病院では、急性期〜回復期のリハビリテーションに加え、住民対象の介護予防事業に携わっていた。現在は、訪問看護ステーションかすたねっとにて、訪問リハビリに従事する傍ら(株)Magic Shieldsのコラムを担当している。

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