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事故防止活動やヒヤリハット活動に時間や労力を取られていても、効果が実感できず悩んでいるという管理者の方は多いのではないでしょうか。
また、家族への転倒事故やリスクの説明に苦労している方もいるでしょう。
事故防止活動は現場の負担を大きく減らし、本来の役割である「生活を支えるケア」に専念できる環境を整える方法での実施が大切です。
今回は、高齢者福祉施設や訪問介護事業におけるリスクマネジメントの専門家である山田 滋氏をお招きし、事故が減る最新のマネジメントについて講演いただきました。
この記事では、その内容を詳しく解説していきます。
動画で学びたい方はこちらから↓
https://www.magicshields.co.jp/seminar/5073/
介護リスクマネジメントの基礎知識

介護のリスクマネジメントを実施するうえで、大切な基礎知識は従来の方法とは大きく異なります。
そこでここからは、介護リスクマネジメントの基礎知識を解説していきます。
新しい事故防止活動に切り替えよう
介護のリスクマネジメントは、新しい事故防止活動に切り替えていく必要があります。
なぜなら、従来の事故防止活動ではリスクマネジメントの効果が上がらないからです。
従来の日本的事故防止活動の多くは、人によるミスが事故の原因であると考えられてきました。
そのため対策が「もっと注意深く実施し、職員によるミスを減らす」となっていました。
しかし、職員の注意力ばかりに頼った対策では、職員にミスを犯させる根本の要因の改善にはつながりません。
新しい事故防止活動とは、人は誰でも必ずミスをすることを前提にミスも含め事故原因の除去に重点を置くリスクマネジメントの形です。
具体的には次のような取り組みが大切になります。
①人にミスをさせる原因も含め事故原因を究明し除去する活動
例えば、ベッドから車椅子の移乗介助中に利用者を転倒させて怪我をさせてしまった場合、従来であれば改善策が「今後はこのようなミスが起きないよう十分注意して移乗介助を行うこと」のみで終わっていました。
しかし、新しい事故防止活動では、さらにミスを起こした根本原因を考えます。
この場合の原因分析の一例は、車椅子の機能性への着目です。
安全機能の低い車椅子を使っている場合は、無理な移乗をせざるを得ず、事故の再発につながる可能性があります。
改善策としては、機能性の高い車椅子への変更を検討することが挙げられます。
②人がミスしても事故につながらない仕組みづくり
例えば、利用者の薬を取り違えて他の利用者に飲ませてしまったとします。
こういう場合、従来であれば、配薬ミスをしないように十分注意してチェックを怠らないというのがよく挙げられる改善策ではないでしょうか。
しかし、人はミスをするものです。
それを踏まえ、ミスをする前提で対策を考える必要があります。
改善策の一例としては、万が一、配薬ミスをしてしまっても、薬が利用者の口に入る前にミスを発見できるチェックの仕組みを作るなどがおすすめです。
事故防止活動は、職員が個人で取り組んでも効率は上がりません。
効率を上げるためにも、組織で取り組み事故防止の仕組みを作ることが大切です。
防ぐべき事故と防げない事故の区分
リスクマネジメントを考えるうえで、防ぐべき事故と防げない事故を区別することは大切です。
なぜなら、介護現場の前提として、全ての事故は防げないからです。
介護とは人が生活することを支援する仕事なので、生活することに伴う避けられないリスクもあります。
防ぐべき事故と防げない事故に区分し、防ぐべき事故に防止対策を講じることで、リスクマネジメントの効率化につながります。
病院・介護施設に過失のある事故は防ぐべき事故ですが、一方で過失のない事故は防げない事故です。
過失のある事故を起こしてしまった場合、やるべきことをやっていれば防げた事故として対策を考える必要があります。
過失とみなされる可能性が高い事故の例は、次のとおりです。
| 事故の種類 | 過失とみなされるケース |
| 直接介助中の転倒 | ・介助時のうっかりミスが原因の事故・力任せの介助による事故 |
| 間接介助中の転倒 | ・見守りを怠ったことが原因の事故 |
| 自立動作中の転倒 | ・転倒リスクが顕著な利用者への介助を怠ったことでの事故 |
| 転落 | ・不適切な介助方法が原因での事故・転落防止のための装置等の設置忘れが原因での事故 |
| 誤嚥 | ・嚥下機能を正しく評価していなかったことが原因での事故・食事介助方法が不適切だったことが原因での事故 |
| 誤薬 | ・誤薬事故の全て |
| 行方不明 | 行方不明のリスクが高い利用者の見守りを怠ったことでの事故 |
| 異食 | ・生命に関わる危険物の管理を怠ったことでの事故 |
| 暴力 | ・利用者が暴力を振るうときに阻止しなかったことでの事故 |
過失の可能性がある事故については、できるだけ具体的にケースを共有しておくことが大切です。
正しい事故の評価方法
事故の頻度や被害の大きさではなく、質で評価することが大切です。
質のレベルわけについては、次の5段階になります。
| 5 | どんな対策を講じても防げない事故 |
| 4 | 事故防止のためには、高度な技術や特殊な知識を必要とする事故 |
| 3 | 基本的な事故防止対策で防げる事故、標準的な技術で防げる事故 |
| 2 | ミスが原因で起きる事故 |
| 1 | ルール違反で起きる事故 |
4と5は、防ぐことが困難な事故として評価されます。
一方で1〜3は過失とみなされ、賠償責任が発生する可能性があります。
しかし、賠償責任のない4の事故も家族は防いでくれるであろうと期待をしていることが多いです。その温度差から家族とトラブルになる可能性もあるでしょう。
大切なのは防げない事故を「防げない」と家族に説明して理解を求めることです。
家族にリスクを共有してもらうのも重要な取り組みになります。
事故の5段階評価と活動方針
さらに事故の評価段階に対し、その対応方針は次のとおりになります。
| 事故の質による評価 | 対応方針 | |
| 5 | どんな対策を講じても防げない事故 | ・事故が起きても怪我をしない対策・家族にリスクを受け入れてもらう取り組み |
| 4 | 専門知識・技術がないと防げない事故 | ・多職種の連携や資格取得、研修によって専門知識・技術の習得や共有を強化する |
| 3 | 基本的な防止対策で防げる事故 | ・危険箇所点検などの危険発見活動を行う・標準的な事故防止対策をマニュアル化する |
| 2 | ミスが原因で起きる事故 | ・介助ミスの原因となる介助方法のリスクを改善する・ミスの原因となる環境要因を改善する |
| 1 | ルール違反で起きる事故 | ・やってはいけない危険な介助方法を文書化する・ルール違反による事故の罰則を周知徹底する |
事故は、全て防ごうとすると効率化につながらず疲弊した結果、失敗します。
5段階にわけて活動方針を変えることが大切です。
また、防げない事故(過失のない事故)は生活事故と、防ぐべき事故(過失のある事故)は介護事故とも呼んでいます。
5の「家族に理解してもらう取り組み」としては、家族が利用者の事故防止対策に協力できるような環境づくりが効果的です。
例えば、ひとりでトイレに行って転倒してしまうリスクのある利用者であれば、家族に次のようにお願いします。
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介護職員に対する遠慮から、ご自分でトイレに行こうとする利用者様がいらっしゃいますので、ご家族からは遠慮しないで介護職員を呼ぶようにお話ししてください。
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上記のように「私達介護職員は入居者様の転倒防止に取り組んでいます。ご家族のみなさまにもご協力お願いします。」というニュアンスで伝えるとよいでしょう。
事故リスクを家族に説明するのは難しく、リスクをそのままストレートに話しても伝わらないかもしれません。
しかし、上記のように協力を促していくと、一緒に対策をしていくうちに事故リスクも共有し合える可能性が高まります。
家族も巻き込んで一緒に事故防止対策をするのが理想的です。
事故防止と身体拘束
利用者の安全確保のために、時として身体拘束を選択しなければならないことがあります。
しかし、身体拘束は違法行為であり、犯罪であるという前提を理解しておくことが大切です。
身体拘束をしても罪にならないケースもあります。
それは、本人または他人の生命や身体の危険を回避するためであり、身体拘束によって発生する弊害よりも得られる安全のほうが大きいケースです。
効率が上がる事故防止活動

事故防止活動の効果を上げたいなら、効率的であることも重要なポイントです。
ここからは、事故防止活動を効率的、かつ効果的に実施する方法を解説していきます。
基本活動とヒヤリハット活動
事故防止活動の効率を上げたいなら、ヒヤリハット活動よりも基本活動をしていく必要があります。
ヒヤリハット活動とは、基本活動で防げない事故を防ぐための補完的な活動だからです。
一方で事故防止の基本活動は、次のとおりです。
【危険発見活動】
- ・設備や業務手順に関する危険(建物・設備・用具、介護動作・介護手順などのリスク)
- ・利用者個別の危険把握と対処(認知症や身体機能にかかわるリスク)
【安全ルールの徹底】
- ・具体例を出し誰でもわかるように文書で危険な介助を行わないように徹底する
- ・ルール違反で事故を起こしたときの罰則を明確に伝えておく
基本活動で特に事故が減ったのが、危険発見活動です。
しっかり実施することで事故防止につながります。
具体的な方法は次のとおりです。
安全ルールの徹底
誰でもわかるように文書で徹底することが大切です。
危険な介助を行わないように具体的に文書で示すようにしましょう。
例えば、車椅子を押して走る、同時に2台押すなどの行為は危険なので禁止するよう文書で共有します。
また、ルール違反で事故を起こした場合にどうなるかを具体的に共有することも効果的です。
就業規則違反として懲戒解雇になるなど、具体的な罰則を職員に認識してもらうことも重要になります。
設備や業務手順の危険を改善する
次に危険を発見し改善をしていく活動を実施します。
具体的には、次の3つの活動です。
1.建物設備や福祉用具の危険を改善する
安全な介護ができる環境が整備されているかをチェックします。
具体的には、床が滑る浴室・グラつく介助バー・緩んだ車椅子のブレーキなどです。
年に1回に危険箇所点検日を設定して、設備や用具の危険を改善しましょう。
2.介助方法のリスクを改善する
介護中の事故は最も責任が重い事故になるため、介助方法の見直しを行います。
身体の仕組みに逆らった動作や職員の介助負担が大きくなる無理な姿勢での介助は、適切とはいえません。
施設で実施されている介助方法が適切に行われているかも、再確認するようにしましょう。
3.業務手順の危険を改善する
効率重視のために安全を軽視していないか、改めて確認しましょう。
例えば、時間のない中での食事介助や流れ作業の入浴は、安全確保に意識が向きにくく危険です。
業務手順に危険がないか今一度、見直しをすることも大切です。
原因分析の方法
従来の原因分析方法では、介護事故が起きたら、介護職のミスであり職員個人に要因があると考えられてきました。
しかし、職員個人の要因とする原因分析は、改善につながりません。
新しい原因分析の考え方を取り入れる必要があります。
それは、原因と背後に隠れた要因を分析していくことです。
事故の原因は一つではありません。
そのため、まずは多角的にたくさん検証することが大切です。
しかし、目に見える直接原因だけ見ても防止対策にはつながりませんので、そこから背後に隠れた要因は何であるか考えていきます。
例えば、車椅子のブレーキがうまくきかず利用者が転倒してしまったとします。
従来は、職員が点検ができていなかったために車椅子のブレーキが緩んだままだったことが原因とされ、それ以上深堀して分析しませんでした。
しかし、新しい事故防止活動の原因分析は、その先の「なぜ点検ができていなかったのか」に焦点をあてることが大切です。
車椅子点検のルール設定がなかったことを振り返れば、改善策は「今後は一斉点検の日を設ける」となります。
防止対策の検討方法
従来の事故防止対策の考え方は、職員の手で事故を防止する対策ばかりでした。
事故は、どの場面で発生したかによっても大きく対策方法が変わります。
新しい事故防止の考え方の前提として、次の3つに区分されます。
- ・未然防止策:事故の根本原因を除去する対策
- ・直前防止策:その場で危険に対処する対策
- ・損害軽減策:事故が起きたとき怪我を防ぐ対策
職員の手だけで防げる事故は、実はわずかなのです。
個人の責任論ではなく、場面に応じて仕組みで事故を防いでいく対策が理想的です。
また、転倒事故が起きても怪我をしないような、損害軽減策も有効になります。
マネジメントの見直し

事故防止活動の効果を上げるために、マネジメント方法も今一度見直していきましょう。
ここでは、特に改善すべき活動を紹介していきます。
事故防止委員会の活動見直し
介護施設では、事故防止委員会が設置されていることがあります。
しかし、職員の責任追及をするだけのつるし上げ型委員会などは、リスクマネジメントとはいえません。
介護現場の事故防止委員会では、次のような取り組みができると理想的です。
- ・現場の取り組みの成功例を他の職場に情報発信する
- ・事故やトラブル情報を発信して共有させる
- ・新しい介助方法などの研修会を企画する
- ・事故事例検討会を主催し、検討内容発信する
- ・危険箇所点検などの一斉活動を指揮する
リスクマネジメントの本来の目的は何かを、今一度見直していくことが大切です。
事故データの集計・分析方法の見直し
事故データ集計・分析は「何のためであるか」ということも見直すことが大切です。
防げる事故と防げない事故を分けずに事故発生数だけを出している、一部の介護施設や病院は存在します。
しかし、混同してしまえば本当の改善策は見えてきません。
転倒事故は、過失の大きさで3つにわけて集計します。
| 転倒事故の種類 | 過失の大きさ | 防止義務 | 増えたときの改善策 |
| 直接介助中の転倒 | 大 | 100 | 介助方法の見直しを行う |
| 間接介助中の転倒 | 中 | 50 | 家族説明を工夫して理解を促す |
| 居室での転倒 | 小 | 1 | 損害軽減策を工夫する |
過失の大きさにより、防止義務の重要度も変わってきます。
防止策の重要度の位置づけができれば、増えたときの改善策も考案しやすくなるため、過失の大きさが混同しないようなデータの集計方法が大切です。
リスクマネジメントの力配分
リスクマネジメントを効率的に進めていくためにも、場面や種類によって必要な力配分を理解しておくことが大切です。
例えば、転倒・転落事故は未然防止や発生時の対応はもちろん重要ですが、その後の事故後の家族への対応も慎重に考えるべきといえるでしょう。
なぜなら、転倒・転落事故の内容により、家族とトラブルになることが多いからです。
また、逆に誤薬事故については、事故後の対応も大切ですが、もっと力を入れるべきは未然防止策となります。
ヒヤリハット活動の見直し
職員によってヒヤリハットと事故の解釈が異なることがあります。
どこまでがヒヤリハットで、どこからが事故なのか現場の定義が曖昧なほど悩んでしまうのです。
事故とヒヤリハットの区分の認識を揃えるためにも、事故報告規定を作ることをおすすめします。
事故の種類や定義などを細かく区分して明記しておくことで、職員間の認識を揃えることができます。
転倒の損害軽減策を考えるなら「ころやわ」

事故防止活動は、従来の考え方から新しい効率的な方法に変えていくことが大切です。
過失の大きさにより、改善策は変わります。
適切な改善策を導き出すためにも、記事で紹介した事故防止活動の基本の考え方を理解し、区分して対策案を出していくようにしましょう。
また、転倒の損害軽減策はみなさんの認識通り難しいのが現実です。
なぜなら、転倒を防ぐ対策は思いついても、起こってしまったときに損害を軽減する方法はあまり多くないからです。
そんなときは、ころやわの導入で骨折を防ぐという方法もあります。
ころやわ転んだ時の衝撃吸収に優れています。
普段は堅い床で歩きやすいのに転んだときだけ凹んで転倒の衝撃を吸収し、骨折予防として活用できるマットです。
転倒時の衝撃は、一般的なフローリングの約半分程度まで抑えられる設計となっています。
また、転倒による骨折予防としては、各商品をそれぞれ使い分けることができます。
ころやわにつきましては、設置範囲や目的に合わせたラインナップをご用意しています。
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